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コレクション展「小説『舞姫』をよんでみよう!」展示会場から その2
投稿日時: 2025-08-29 (234 ヒット)
開催中の展覧会から展示資料を紹介します。
『塵泥』千章館 大正4年【1A-チ2】

『塵泥[ちりひじ]』は鴎外の創作小説4編を収録した書籍です。自身の留学経験に着想を得、ドイツを舞台にした三作品『うたかたの記』、『文づかひ』、『舞姫』に加え、日本を舞台にした『そめちがへ』が掲載されています。鳥や草花をあしらった表紙の装丁は、画家・橋口五葉の装丁です。
鴎外生前の『舞姫』掲載書籍としては、雑誌「国民之友」に始まり、『国民小説』、『美奈和(水沫)[みなわ]集』、『改訂美奈和(水沫)集』に次ぐ5番目に出版されました。
鴎外は、『舞姫』を再掲する度に手を入れました。初出から25年が経って出版された『塵泥』も例外ではなく、『改訂美奈和(水沫)集』と比較すると150ヶ所以上におよぶ異同が見られます。例えば、冒頭の2番目の文では、それまでの収録で「熾熱灯[しねつとう]の光の晴れがましきもやくなし」と書かれていたのが、本書では「やくなし」が「徒[いたづら/あだ]なり」に修正されました。
『舞姫』を掲載・出版する際には、生前のどの収録に依拠したかで文言が変わってきますが、現在は『塵泥』版が底本とされています。『塵泥』を含む生前の『舞姫』収録書籍6冊は、展示室でご覧いただけます。