お知らせ

特別展「本を捧ぐ—鴎外と献呈本」展示会場から その3

 投稿日時: 2025-06-08 (177 ヒット)

開催中の展覧会から展示資料を紹介します。
 
右〔与謝野寛・晶子旧蔵〕、左〔小島政二郎旧蔵/鴎外献呈署名本〕
鴎外『仮名遣意見(かなづかいいけん)』私家版 明治41(1908)年 【いずれも個人蔵】





 
明治41年、臨時仮名遣調査委員会における自らの演説を再演して速記させたものです。
冒頭には赤いインクで「秘」と捺されています。発行部数は不明ですが私家版のためおそらく少部数であったと思われます。本展では与謝野寛・晶子旧蔵のものと、小島政二郎旧蔵のもの、二冊が揃いました。
 
与謝野夫妻旧蔵のものは鴎外の献辞はありませんが、二人の蔵書印が確認できます。ところどころ寛によるとみられる訂正や句読点の変更の書き込みがなされています。これは鴎外没後間もなく「明星」2巻5号(大正11年10月)に『森林太郎先生遺文(其二)』として掲載された字句と一致します。
 
小島旧蔵のものは、発行から12年後の大正9(1920)年5月18日に贈られました。朱墨で「コレガ最後の一部」であると記され、「ドウゾ御手元ニ保存シテ置イテ下サイ」と書かれています。署名「森林太郎」の下には鴎外の花押が添えられているところも興味深い献呈署名本です。大正5年当時、学生だった小島は、随筆『オオソグラフィイ』において鴎外の仮名遣いについて言及したことがあり、それをきっかけに鴎外と交流が始まりました。30歳以上年の離れた鴎外と小島ですが、長らく仮名遣いについて意見を交わしていたであろうことが想像できます。
 
与謝野夫妻旧蔵のものは展覧会図録への掲載はありません。また、小島旧蔵のものは展覧会初出品という貴重な献呈署名本です。是非会場でじっくりとご覧ください。

特別展「本を捧ぐ―鴎外と献呈本」は、今月6月29日(日)までの開催です。
 


ページトップ