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特別展「本を捧ぐ―鴎外と献呈本」展示会場から その1
投稿日時: 2025-04-28 (113 ヒット)
〔鴎外旧蔵/柳田國男献呈署名本〕
柳田國男編著『後狩詞記(のちのかりことばのき)』柳田國男 明治42(1909)年 【東京大学総合図書館蔵】

本展は「鴎外に贈られた本」と「鴎外が贈った本」の二章立てで構成しています。
今回は第一章「鴎外に贈られた本」から、柳田國男編著『後狩詞記』を紹介します。
今年生誕150年を迎えた民俗学者・柳田國男による初めての民俗学の本で、自費出版、限定50部の発行です。扉には柳田から鴎外への献辞「森先生清鑑 柳田國男拝」が記されています。「清鑑(せいかん)」は相手の鑑識を敬う言葉で、自らの文章などを見てもらう際に用います。
日本民俗学の父とも称される柳田と鴎外に交流があったことを意外に思われるかもしれません。鴎外は柳田の実兄・井上通泰(歌人、眼科医)と親しく、明治20年代、共に文学活動に取り組みました。
柳田も14歳の頃より鴎外主宰雑誌「しがらみ草紙」に短歌を寄稿しています。10代の柳田はよく鴎外のもとを訪ねており、鴎外から「今は何を読んでいる?どんなものが面白い?」と声をかけられ、かわいがられていました(柳田『故郷七十年』)。
鴎外は少年時代からよく知る柳田より贈られた本書に、自ら柿渋色の表紙をつけ自筆でタイトルを記しています。鴎外なりの大切な保管方法だったのでしょう。本書とあわせて、柳田から贈られた『南方二書』(東京大学総合図書館蔵)を展示しています。また、第二章「鴎外が贈った本」では、柳田の兄・井上通泰による鴎外が贈った本への礼状も紹介しています。