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コレクション展「鴎外の妹・喜美子の家族」展示会場から その2
投稿日時: 2025-03-25 (122 ヒット)
書簡「鴎外筆 喜美子宛」大正9(1920)年1月20日 【個人蔵(星ライブラリ)】

巻紙に縦書きで、「美(うるわ)しき座布団一枚(ざぶとんいちまい)御恵与被下(ごけいよくだされ)忝奉存候(かたじけなくたてまつりぞんじそうろう」とあります。
日付は大正9(1920)年1月20日と記されており、ちょうど鴎外が58歳になったばかりの頃です。喜美子はなんらかの内祝いとして、座布団を鴎外に贈ったのでしょう。これは、その礼状です。自分は内祝いを受け取らない方針だが、「座布団ハ入用品(いりようひん)」だと鴎外は書いています。身内への礼状に鴎外の律義さが感じられます。
この書簡は、小説家の星新一(1926~1997)の手元にありました。星新一といえば、ショートショートで知られる小説家。しかし、鴎外の書簡が、なぜ彼のところにあったのでしょう。
鴎外の妹・小金井喜美子には、4人の子どもがいました。そのうち娘の精(せい)は、星製薬創業者・星一(ほし・はじめ)と結婚。星夫妻の息子・親一(しんいち)は、やがて「星新一」というペンネームで小説家として活躍することになるのです。新一にとっての大伯父・森鴎外が祖母・喜美子に送った書簡ですから、それを譲られたとしても不思議なことではありません。
喜美子の二つの家族、森家と小金井家の交流を象徴しているようでもあるこの書簡は、4月6日(日)まで開催のコレクション展「鴎外の妹・喜美子の家族―森家と小金井家」で、限定公開しています。
なお、この書簡は、星ライブラリのご厚意により、特別に本展への出品が叶うこととなりました。御礼申し上げます。