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特別展「鴎外の食」展示会場から その3

 投稿日時: 2023-06-22 (828 ヒット)

 

鴎外自筆写本『膳部之事』 大正3(1914)年 東京大学総合図書館蔵

 
写本『膳部之事』は武士の供応食として始まった本膳料理と食事作法「飯くひやう」について記されています。
本展チラシで目を惹く素朴なお椀や鯛の絵はこの『膳部之事』の挿図で、実は全て鴎外(当時52歳)が描きました。
鴎外の完全な創作ではなく、鴎外が「礼式の書」と称したもの(『鴎外日記』大正3年12月31日)を描き写したことが分かっていますが、底本の特定には至っていません。
 
挿図は本膳料理の部分のみに描かれています。
下書きがあるようには見えません。
筆で慎重に輪郭を描き、濃淡をつけながら丁寧に彩色を施していることが分かります。
底本があるとは言え、骨の折れる作業だったと思いますが、絵を描く様子を傍で見ていた長女・茉莉は鴎外が「遊んでいる」ようだと感じたそうです(茉莉『父と私』)。
鴎外が『膳部之事』を描き写した理由も分かっていませんが、この写本からは鴎外が日本の食文化や食事作法に強い関心を示し、楽しみながら描いたことが伝わってきます。
 
本展展覧会場では、『膳部之事』の実物を展示している他、全丁を一覧した展示パネル、『膳部之事』と類似性がみられる資料をタッチパネルでご覧いただけます。
 
特別展「鴎外の食」は7月9日(日)までの開催です。
 


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