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コレクション展「小説『舞姫』をよんでみよう!」展示会場から その1
投稿日時: 2025-08-06 (287 ヒット)
開催中の展覧会から展示資料を紹介します。
『森鴎外自筆 舞姫草稿』(複製)跡見学園女子大学刊 令和4年【1E-モ53】

鴎外の小説『舞姫』は、明治23年1月雑誌「国民之友」に掲載されて世に出ました。
本展では、同誌掲載のために書かれた草稿(複製)を展示しています。冒頭の「石炭をばはや積みはてつ」から最後の一文「されど我が脳裏に一点の彼を憎むこころ今日までも残れりけり」に至る物語を、28枚にわたり鴎外手書きの文字でお読みいただけます。
草稿には、鴎外が几帳面な字で綴り、さらに自ら文言を削除したり、書き直した形跡を見ることができます。例えば、冒頭の2番目の文中、「熾熱灯[しねつとう]の光の晴れがましきも」の「光」という言葉は、当初、文中で別の語順で書いていたのを修正したということがわかります。
一方、余白に目をむけると、鴎外ではない別の人の名前がいくつも見られます。これは、手書き原稿を元に活字を一つ一つ探し出し、印刷で使う版のために文字を組む人々(文選工や植字工)による作業の跡だと考えられます。「国民之友」のページ切替部分に相当するところには、赤やピンク色で印もつけられています。
出版された作品には現れることのない、原稿を巡る様々な手の跡を、会場でぜひじっくりとご覧ください。